「もっと頑張らなくちゃ」
「まだまだ頑張れる」
真面目な人ほど、体や心が疲れていても、そう言って頑張りがちです。
もちろん努力することはいいことですが、頑張り続けているうちにいつの間にか体や心が「限界」を迎えてしまうと、大きな病気にかかったり、取り返しのつかない結果になったりしかねません。
人生はマラソンです。走り続けるためには、自分の心身の声に耳を傾けて、無理をしないようペースを調整する必要があります。
特に心の声には注意深く耳を傾けなければなりません。なぜなら体の健康と違って、心の健康はなかなか目に見える形では現れないからです。
ここでは、精神科医のイアン・RH・ファルーン氏が考案した心の病気の初期症状を見つけるための10の質問をもとに、あなたの心が発しているかもしれない「限界」のサイン10個を紹介します。
1.寝つきが悪かったり、早朝に目がさめたりすることが続いている
一般的に「疲れているのに眠れない」という状態が2週間以上続くと、うつの兆候があると判断されます。もし今、1週間ほど寝つきの悪さや、眠りの浅さを感じているのであれば黄色信号が灯っている状態だと言えるでしょう。
なお、「眠れないからお酒を飲んで寝ている」という人も要注意。たまに寝酒をするくらいなら問題ありませんが、それが習慣化すると量が少なくてもアルコール依存症になる可能性があるからです。
2.食欲不振・過食、それらに関連した体重減少・体重増加がある
うつの人の多くは「食欲がなくて痩せてしまった」という症状を訴えます。またうつになっていなくても、継続的なストレスは胃炎や胃潰瘍、過敏性腸症候群など、消化器官に関する症状につながります。
またうつとは別に、満腹を通り越して動けなくなるまで食べ続け、挙句に食べたものを吐いてしまう、といった「過食」もストレスが原因で起きる症状です。
「自分はもともと少食だから・よく食べる方だから」と思う人もいるかもしれません。
その場合は食欲不振なら体重減少、過食なら体重増加と嘔吐の有無を目安に、問題になるレベルなのかどうかを判断しましょう。
3.「何もする気が起きない」「好きだったことに興味が持てない」ことがある
・体は元気なはずなのに、休みの日に何かをする気にならない。
・「何かしなきゃ」と思って趣味に時間を使ってみるが、楽しいどころか疲れただけ。
これらはうつの代表的な症状の一つです。もちろん人間ですからやる気や興味の浮き沈みはあって当然です。実際うつになった人たちも、最初は「気のせいだ」と考える人が大半です。
しかしそれが2ヶ月、3ヶ月と続いた場合は、心が限界に近づいていると考えるようにしましょう。
4.食べるもの、着るものなど日常的な選択で悩むことがある
人間誰しも悩むもの。しかし人生の重大な決断を迫られているならともかく、日常の些細なことまで悩み始めたら、心が疲れているサインです。
うつになると、気分がふさぎこんで、小さなことについてもくよくよ悩んでしまうようになります。本当なら悩む必要もないようなことなのに、なぜだか決められない……判断能力が大幅に下がってしまうのです。
具体的な例としては「ランチで何を食べたらいいかがわからない」「近所のコンビニまで出かけるだけなのに、どの服を着たらいいかがわからない」といったもの。心当たりのある人は要注意です。
5.集中力がなくなった、「うっかり」の忘れ物が増えたと感じる
心が疲れていると、気持ちの余裕がなくなります。一つのことを冷静に考えることができなくなり、集中力が低下していきます。
すると本を読んでいても長い時間集中できなかったり、映画を観ていてもずっと座り続けていられないとか、内容が頭に入ってこないといった状態になります。
・うっかり家の鍵をかけ忘れる。
・電車の網棚にうっかりかばんを置き忘れる。
・お皿をうっかり落として割ってしまう。 など
といったことも、心の疲れからくる集中力の低下が原因で起きる場合があります。
「年のせいだ」と思う人もいるかもしれません。もし本当にそうならまだマシですが、そうではない可能性もしっかり頭に入れておきましょう。
6.「生きていてもしかたない」「消えてなくなりたい」と思うことがある
「もう死んでしまいたい」と思ったことがある人は、「言っていないだけで、実はみんな同じようなことを考えたことがある」と考えているかもしれません。
しかし世の中は「辛いな」「嫌だな」と思うことはあっても、「死にたい」とは思わないという人がほとんどです。
それが衝動的な思いではなく、冷静な思いならなおさらです。自殺の方法を調べてみたり、自殺の計画を立てたことがあったりする場合は、かなり深刻に心が疲れていると言えます。
今は死が唯一の選択肢に思えるかもしれませんが、全くもってそんなことはありません。まずは心と体を休めましょう。
7.人前に出るとき、他の人よりも不安や緊張を感じやすいタイプだ
「不安は緊張を感じるのは、気合が足りないからだ」と言う人もいますが、実は過度の不安や緊張は「不安障害」という病気の可能性もあります。
不安障害にかかる人の特徴としてあげられるのは、神経質、心配性、完璧主義、理想主義など。「失敗したらどうしよう」という思いが強いため、人よりも不安になったり緊張したりするのです。
またもともとの性格以外に、過度のストレスを溜め込んだ場合や、一時的に大きなストレスがかかる出来事がある場合にも不安障害を発症することもあります。
どちらにせよ社会で普通に生活を送っていくには、心の負担が大きすぎるため、ケアが必要な病気です。
8.強い恐怖や不安を感じると、動悸や手の震え、めまいなどが起きる
不安障害になると心臓が急にバクバクとする動悸、手の震え、めまいや冷や汗、口の乾きなどの症状が出る場合もあります。
前述したように不安障害の原因には心の疲れも含まれるので、こうした症状がある場合も心の休養をとる必要があるでしょう。
9.「頭の中で考えているだけのことが周囲に伝わっている」と感じることがある
「誰かが自分を見張っている」
「自分が頭の中で考えているだけのことが周囲に伝わってしまっている」
「もう家にはお金がなくて、明日から生きていくことができない」
こうしたことを人に言うと「そんなことないよ」「何言ってるの?」と奇妙がられた経験がある人も、心が疲れてしまっているかもしれません。
なぜなら、現実にはないことをなぜか信じてしまったり、それによって不安やパニックを起こしてしまったりするのは、統合失調症やうつの前兆とされているからです。
もちろん事実関係を確認することは大事です。しかし事実でないことが確認されたあとも、同じことを考えてしまう場合は、少し休養が必要だと言えます。
10.自分にしか聞こえない「誰かの声」がはっきり聞こえる
・どこからか自分を馬鹿にする声が聞こえる。
・仕事でミスをしたあと、ずっと後ろで自分を笑っている声が聞こえる。 など
こうした声がもし誰もいない場所で聞こえたり、自分にしか聞こえなかったりする場合、統合失調症の初期症状が出ている可能性があります。
統合失調症の原因はいまだ解明されていませんが、遺伝的な影響が3分の2、残り3分の1が3分の1とされています。つまり過度なストレスを受けると、誰でも発症する可能性が十分あるのです。
「誰かの声」ははっきり聞こえるので、不安に思うかもしれません。でもまずは、その原因を突き止めるためにも、心を休ませる時間を作ってみましょう。
まとめ
真面目な人は、頑張るのが当たり前すぎてなかなか自分の心の限界に気づくことができません。ここで挙げた10個の中に当てはまるものがあった人は、素直に「自分の心はいつもより少し疲れている」と認め、きちんと心をケアしてあげてください。