<ライタープロフィール>
鈴木 直人
全国退職者支援会専属ライター。1989年生。社会人1年目にプライベートのトラブルが原因でうつ病にかかり、職を転々とする。その後2年ほどの無職期間を経て、フリーライターとしての活動をスタート、現在に至る。自分のペースで仕事ができる今の仕事を天職だと考えている。全国退職者支援会の想いに共感し、2020年から専属ライターとして所属。
「仕事がつらくて、心が病んでしまいそうだ(病んでしまった)」
こんな思いを口に出す人に対して、「苦労した分だけ成長できる。我慢するのも大事だ」と言う人がたくさんいます。
我慢、忍耐が美徳とされる日本では、もしかしたらこれが常識的な考え方なのかもしれません。
しかし我慢をしすぎて、うつをはじめとする精神疾患にかかれば、取り返しのつかないことになりかねません。
実際、うつの診断では「完治」という言葉は使われません。うつの症状が改善した時に使われるのは「寛解(かんかい)」という言葉です。
完治が病気が完全に治った状態を指すのに対し、寛解は「いつまた再発するかはわからないが、現時点では問題ない状態」を指します。
うつになる、ということはある意味で「一生うつと付き合っていく」ということでもあるのです。
だから心が病みそう、あるいは病んでしまった原因が仕事なのであれば、今の状況を我慢せずに、何らかのアクションをとるべきなのです。
ここでは仕事内容が原因で心を病んでしまった人に検討してほしい3つの選択肢を紹介します。
ぜひ参考にしてください。
自分ができる範囲で、仕事に対する考え方・働き方を変えてみる
この選択肢に向いている人
一つ目の選択肢は、自分ができる範囲で、仕事に対する考え方・働き方を変えてみることです。
・まだ精神的にかなり余裕がある。
・現時点で心療内科や精神科などにかかっていない。
・基本的に自分の心や体が思い通りにコントロールできている
上記3点全てに当てはまる人には、この選択肢が向いています。
具体的にどうしたらいいの?
問題は具体的にどう考え方・働き方を変えていくかです。
例えば、本当はやりたい仕事があったにもかかわらず、配属などの問題で今の部署の仕事が好きになれない、という悩みを抱えている場合は、仕事をする際の着目点を変えてみるといいでしょう。
つまり「好き・嫌い」ではなく、「自分にできる・できない」で仕事を見るのです。
会社があなたをその部署に配属したのは、あなたならその仕事を見事にこなしてくれると考えたからです。
だから「自分にできる・できない」に注目すれば、自分が思っている以上にできているところが見つかるはず。
そのことに気づくことができれば、仕事へのモチベーションもアップしていきます。
この選択肢のメリット・デメリット
メリット | ・リスクがほとんどない。 ・うまく考え方・働き方が変われば、パフォーマンスアップにもつながる。 |
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デメリット | ・すでに余裕がなく、自分をコントロールできない人が実践するのは難しい。 |
この選択肢のメリットは、自分が変わるだけなのでリスクがほとんどないこと。
うまく考え方・働き方が変われば、仕事の無駄がなくなるので、パフォーマンスアップにつながる可能性もあります。
一方で、すでに心療内科や精神科などにかかっており、「自分を変える余裕なんて残っていない」という人には実践が難しいのがデメリットです。
真面目な人には悔しいことかもしれません。
でも無理をすれば症状が悪化する可能性があるので、絶対に「頑張って自分を変えるんだ」とは思わないようにしてください。
自分一人で抱え込まないで、他の人に頼る技術を身につける
この選択肢に向いている人
二つ目の選択肢は自分一人で抱え込まないで、他の人に頼る技術を身につけることです。
「余裕がなくなってきたな」という自覚が出てきた人や、完璧主義で何かと「自分がやらないと!」と思いがちな人に向いている選択肢です。
具体的にどうしたらいいの?
例えば上司からの無茶振りが多く、自分のキャパをオーバーしてしまっているような場合は、「うまく上司を利用する」という視点も大切です。
最初から自分の中の100点満点を目指してしまうと、上司からやり直しを指示された時のショックも大きくなります。
時間もかかるので、やり直しの指示から次の締め切りまでの時間も短くなり、余計に辛くなります。
こうした事態を回避する方法の一つは、「60点〜70点くらいで提出する」です。
これなら方向修正も楽にできますし、やり直しの指示から次の締め切りまで余裕もあるので、無駄なく確実に完成度をアップさせられます。
加えて「すみません、○○さんの知恵をお借りできたらと思うのですが……」などと頼られれば、人は誰しも嬉しいもの(たとえ口では「自分で考えろ!」なんて言っていても)。
上司からも気に入られ、より楽に仕事ができるようになります。
人に助けてもらって、自分が本来やるべき仕事に集中するための技術については、メンタリストDaiGoさんの『なぜかまわりに助けられる人の心理術』がわかりやすく解説してくれています。
興味のある人は、手に取ってみてください。
この選択肢のメリット・デメリット
メリット | ・自分の負担が大きく減るため、一気に気持ちが楽になる。 ・頼り方さえ間違えなければ、人間関係へのプラス効果も期待できる。 |
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デメリット | ・仕事の質が落ちる可能性がある。 ・完璧主義の人には自己変革が必要になる。 |
この選択肢のメリットは、他の人を頼ることによる負担減、そして頼られた側が自己効力感(誰かの役に立っている感覚)を感じることによる人間関係へのプラス効果です。
一方で、部下などに頼ることで一時的に仕事の質が落ちる可能性がある点はデメリットです。
特に完璧主義の人の場合は、自分の考え方を変えなければならないので、負担に感じるかもしれません。
しかし完璧主義は、仕事でもプライベートでも、心に負担がかかりやすい考え方でもあります。
自分の心を守るという意味でも、これを機に改めてみるのもいいでしょう。
退職することで、環境を大きく変えてみる
この選択肢に向いている人
三つ目の選択肢は「退職することで、環境を大きく変えてみる」です。
すでに精神疾患の診断を受けていたり、心の疲労が体調に現れたりしているような人にとっては、検討に値する選択肢です。
この選択肢のメリット・デメリット
メリット | ・根本的な問題解決になることがある。 ・じっくりと心と体を休ませる時間がとれる。 |
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デメリット | ・無職になるリスクや、それに対する不安が大きい。 ・きちんとした準備をしておかないと、状況が悪化する可能性もある。 |
仕事や職場の人間関係が原因で心を病んでしまったのなら、そこから距離を置く「退職」という方法は、根本的な問題解決につながる可能性があります。
じっくりと心と体を休ませる時間がとれるので、病状改善の期待も持てます。
一方で無職になることで経済的なリスクが高まったり、「お金がなければ生きていけない」という不安を感じたりして、逆に病状が悪化するおそれもあります。
これらのデメリットを回避するための方法は大きく2つあります。
一つは退職ではなく、休職することです。休職できる期間は会社によって違いますが、休職後に戻りやすい環境がある会社であれば、検討してもいい選択肢です。
もう一つは、きちんと準備した上で退職する方法です。準備とは、失業保険や傷病手当金といった公的な保障を最大限受けるための準備のことです。
傷病手当金は給与のおおよそ3分の2を、最大1年6ヶ月に渡って受け取れます。
その間にゆっくりと心と体を休めれば、万全の状態で次の仕事を探すことができるのです。
ただし、公的な保障を最大限活用するためには、複雑な条件や手続きをクリアしなければなりません。
なかには一つ間違えただけで大幅にもらえるお金が減ってしまうものもあります。
全国退職者支援会では、心や体にトラブルを抱えた方々が少しの間違いで損をしないように、退職時の給付金申請サポートを行なっています。
手続き等に不安を感じる人は、ぜひ利用を検討してみてください。
まとめ
・自分が変わる
・他人に頼る
・環境を変える
これが仕事が原因で心を病んでしまった人に検討してほしい選択肢です。
仕事でもプライベートでも、問題の原因がわかっているのにアクションを起こさない理由はありません。
心の不調の原因が仕事であることがわかっているのなら、我慢を続けている必要はないのです。
もちろん無理をする必要はありません。色々な角度から、心が疲れてしまっている今の自分にできることを模索してみましょう。