「着替え時間は労働時間」と言える判例

突然ですが、あなたの会社は出勤してからの流れは、こんな風ではありませんか?

8:40~
業務前の着替え
業務前の清掃
朝礼

9:00~
業務開始

実はこのような勤務体系は8:40から給料が発生している可能性がたいへん高いのです。それだけでなく、

お昼休憩の電話番
業務後の会議
業務後の着替え

こういった時間もすべて時間外労働です。「業務後の会議」は分かりやすいですが、業務後の着替えも残業代に含めるなんて現実的なのでしょうか。

わたしの最後の勤め先だった一部上場企業も、10分前朝礼が行われていましたが給料は出ませんでした。

前回の記事「こんなにある。サービス残業で会社に指導が入った例」では労基署の調査が入った例を取り上げましたが、今回は個人が裁判を起こした例を見てみましょう。

仮眠時間・着替え時間を労働と認めた事例.イオンディライトセキュリティ事件

警備業務に従事していた社員の仮眠時間、休憩時間、朝礼時間、着替え時間を「労働時間」であるとして訴えたもの。
労働契約に基づいて、仮眠室での仮眠(待機)をしながらも緊急時は即対応できることを会社より暗に要求されており、これを裁判所は労働時間と認定。

また朝礼時間、着替え時間に関して、始業前にかならず全社員が制服に着替えた上で朝礼に参加する義務があったこと、警備員は警備業法で制服の着用が義務付けられていたこと、制服による出退勤は禁じられていたことなどを勘案し、原告側の主張を全面的に支持。

これを簡潔にまとめると、

朝礼、着替えの時間は労働時間である
警備員の仮眠時間は労働時間である

ということを裁判所は認めています。

着替え時間を労働と認めた事例.三菱重工業長崎造船所事件

「時間までに着替えなどの準備を終えて作業場にいること」を勤怠の基準としていた会社に対し、「入場門から入場して更衣室まで移動する時間や、着替えたりする時間は労働時間である」として訴えたもの。

裁判の結果、

・始業前、更衣室で作業着に着替え、作業場に移動する時間
・始業時間前の準備作業
・終業後、作業場から更衣室に戻り、着替える時間

以上の訴えが「労働時間である」と認められた。いっぽう、

・入場門から更衣室までの移動
・昼休憩が終わる前に、食堂→作業場まで移動する時間
・昼休憩が終わる前に、作業着を着直す時間
・終業後に身体を洗って、普段着に着替える時間
・更衣室から対縄文までの移動

これらは労働時間と認められなかった。

労働時間とはなにか

以上の判例から明らかになったのは、労働時間とは

・会社から命令を受けて
・なおかつ会社の指揮監督下に行われているもの

を指すということです。

つまり
・会社から命令を受けただけ
・会社の指揮監督下にないもの

両方を満たしていないこれらは労働時間とは言い切れない、ということになります。
かんたんに言うと「”しない自由”が無いものは労働である」ということですね。

たとえば
・出張命令を受けて新幹線に乗る場合

出張命令は命令に違いないのですが、電車内では指揮監督下に置かれていません。社員が雑誌を読もうがうたた寝をしようが問題ないわけです。

いっぽう「新幹線の中でも資料作成をするように」などと会社から指示を出されていたら「資料作成をしない自由は無い」わけですから、労働時間となります。

同じく「参加任意の朝礼」なら出ても出なくても労働時間ではありません。しかし業務でわからないことがあったとき「朝礼で説明していたのに参加しなかった君が悪い」などと上司から言われればこれはもう朝礼を強制していることと同じです。

その時の労基署の見解です。
①参加を強制していなくとも、朝礼時にその日の仕事の流れ、段取り等の説明があり、参加していないと業務上何らかの支障がでると言う場合は、強制しているとみなす。

引用元:総務の森

わたしの場合、上司から「早朝の町内清掃」を命じられていました。「行かない自由」や「清掃せずに散歩する自由」などは無かったわけですから、明らかに労働時間だったということですね

いまの状況を直したい・残業代を請求したい場合

もしあなたの会社が同じような状況に陥っていて、それをつらい、なんとかしたいと思っているなら、動き出すことを考えたほうがいいでしょう。

1.に「客観的な証拠集め」
2.に「相談」です

詳しくは「こんなにある。サービス残業で会社に指導が入った例」の記事後半、「不払いがあった場合、どう動けばいいのか」で説明していますので、よかったらご覧ください。

社内コンプライアンス部門に匿名で通報したところ、2日後には朝礼は廃止となりました。スタッフは「よかったね」と口をそろえて、管理職は「これからどうするの…」とぼやいていたのを覚えています
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