多くの人は退職の際に「退職金」をしっかりと受け取りたいと考えているはずです。
しかし、退職金がどういったお金であり、どれくらいの金額を受け取ることができるのか把握している人は少ないのではないでしょうか。
そこで今回は、事前に理解しておきたい退職金にまつわる内容を紹介します。
退職金制度について
「退職金」と聞くと、定年退職まで勤め続けた場合にもらえるお金だと考える人もいるかもしれません。
しかし、退職金は定年退職以外の退職でも受け取ることができます。
退職金とは?
会社を辞める時に受け取ることができるお金を「退職金」と言い、会社から支払われる賃金の一種類です。
退職金は法によって定められているものではないので、会社ごとに退職金に関する就業規則が定められています。
そのため、会社によって退職金の有無や支払い額も異なるのです。
関連記事:退職金がもらえるかどうか分からないときはどうすべき?
厚生労働省の調べによると、平成30年時点で1000人以上の企業規模であれば92.3%の企業が退職金制度を導入しているとされ、30人以上~1000人以上の企業規模トータルの平均でも8割以上の企業が退職金制度を導入していることが分かります。(厚生労働省:『退職給付(一時金・年金)の支給実態』参照)
つまり、現在多くの会社で退職金制度が導入されているということです。
2種類の退職金制度
退職金制度には「退職一時金」と「企業年金」の2種類が存在し、それぞれ違った退職金の支払い方法となっています。
退職一時金制度は、退職する際に一括退職金が支払われる制度です。会社の規定によって支払われるので、規定変更がない限りは支払われることになります。
一方で、企業年金制度は一括で退職金は支払われません。退職した後に一定の金額を年金として支給するので、一定の期間もしくは生涯にわたって少しずつ支払われます。
退職金はどれくらいもらえる?
退職金規定が定められている会社の場合、自分が退職するとなるとどれくらいの退職金を受け取れるのか知りたいと思うのは当然です。
しかし、退職金が支払われてから金額を知る人も少なくありません。
退職金をどれくらい受け取ることができるのかは、会社の規定や退職時の状況によって異なります。
退職金の算出方法
退職金を算出する方法は、会社によって異なります。どういった算出法を採用しているかは会社ごとに独自で設定されています。
主に採用されている算出方法は、「年功型」と呼ばれる勤続年数に応じて算出する方法です。
また、「別テーブル型」といって勤続年数に加えて退職理由や役職などを考慮して算出する方法もあります。
最近では、会社への貢献実績などをポイント制にして算出する「成功報酬型」も多く用いられています。
退職理由によっても金額は異なる?
退職金の算出方法には、退職理由も含まれるケースも多くなっています。
退職理由は大きく分けると、「自己都合退職」と「会社都合退職」の2つに分かれます。
自己都合退職は会社都合退職よりも金額が少ないことが多く、1.5倍~2倍ほど金額に差が出る場合もあります。転職によって退職する場合は、自己都合退職になるケースが一般的です。
※自己都合退職と会社都合の違いについてはこちらの記事をご覧下さい。
退職金の相場とは
退職金は会社ごとによって異なりますし、退職理由、学歴によっても異なるものです。
退職金の相場は以下になっています。
大卒(管理事務技術)勤続20年以上 | 高卒(管理事務技術)勤続20年以上 | 高卒(現業職)勤続20年以上 | |
会社都合 | 2,156万円 | 1,969万円 | 1,118万円 |
自己都合 | 1,519万円 | 1,079万円 | 686万円 |
(参照:厚生労働省「退職給付(一時金・年金)の支給実態」平成30年調べ)
上の表から見て分かるように、自己都合退職に比べると、会社都合である方が退職金が高額になることが分かります。
勤続20年以上で会社都合退職の場合であれば、学歴に関係なく1000万円以上の退職金が相場になっています。
会社の退職金制度を調べるには?
会社へ退職願いを出す前に退職金制度を知っておきたい場合は、就業規則を確認しましょう。
退職金規定として支払い日や算出方法などが記載されているはずです。
関連記事:退職金がもらえるかどうか分からないときはどうすべき?
退職金はいつ受け取れる?
退職するのであれば、退職金を当分の生活費として再就職活動をしたいと考える人もいるでしょう。
退職金はいつ頃受け取ることが出来るのでしょうか?
労働基準法における退職金支払日とは
退職金の支払い時期については、労働基準法23条に「権利者の請求があった場合においては7日以内に賃金を支払わなければならない」と定められています。
つまり、法律的には請求から7日以内に退職金が支払われることになります。
ただし、就業規則が定められている場合には、労働基準法よりも就業規則が優先されます。
なぜならば、退職金は法律で支給が定められているのではなく、就業規則に基づいて支給されるからです。
そのため、退職金の支給日については、まず最初に就業規則を確認してみましょう。
退職金を受け取れるタイミング
退職金が支給されるタイミングは、会社によって異なります。
会社ごとに就業規則で定められている退職金に関する規定は異なるので、支給日についても会社ごとによって違うのです。
また退職金は退職が決まってから金額の算出や手続きが行われるので、退職してすぐに振り込まれるというわけではありません。
一般的には、退職してから1週間~退職月の翌々月頃までに市支払われるケースが多くなっています。
しかし、半年以上の時間がかかるケースもあるので、支給日についてはあらかじめ担当課に確認しておきましょう。
退職金には5年という時効があるので、時効までに受け取ることが大切です。
退職金にも税金がかかるので注意!
退職金が支給されれば、一度に多くのお金を手にすることができます。
しかし、退職金には所得税と住民税がかかります。
そのため、予想していたよりも金額が少なく感じてしまうこともあるでしょう。
ただし、退職一時金のように受け取る金額が大きい場合には「退職所得控除」という制度を受けることができます。
これは退職金の税負担を軽くすることができる制度であり、「退職所得申告書」を会社に提出することで手続きを行えます。
退職金が少ない、もらえない場合はどうする?
実際に支給された退職金が予想よりも少なかったという場合や、支払ってもらえないというケースもあるでしょう。
こういった場合にはどうすべきなのでしょうか?
退職金制度をもう一度確認する
就業規則に記載された退職金制度に関する規定をもう一度確認してみましょう。
退職金制度について記載がないのであれば、退職金自体がないという可能性もあります。
また、入社から3年以内など入社年月で退職金は支払わないという規定があるケースもあります。
懲戒解雇ではないか?
退職理由が懲戒解雇である場合、退職金が支払われないようなケースがあります。
懲戒解雇になるには相当の理由があるはずであり、懲戒解雇では退職金を不支給にすることを定めている会社もあります。
ただし、懲戒解雇であったとしても理由によっては退職金が全額不支給になることは不当であるとして支払われたようなケースもあります。
※懲戒解雇について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
まとめ
これまで一生懸命働いてきたからには、退職金をしっかりと受け取りたいと思うことは当然です。
そして、退職金は退職してからの新しい生活には必須です。
退職金に関する疑問や不安がある場合には、当会へご相談ください。
また、退職金が不当に支払われないようなケースや、支給額が少ないと感じた場合には弁護士に相談して請求することもできます。
自分がこれまで頑張ってきた証となる退職金だからこそ、泣き寝入りすることなく納得のできる金額が受け取れるようにサポート致します。