退職には「会社都合」と「自己都合」の2つの名目があることを知っていますか?
会社都合と自己都合は、同じ退職でも全く異なるものとなります。退職の際に支給される手当まで異なりますので、損をしないようにしっかりと違いを知っておきましょう。
会社都合と自己都合の2つの名目とは
会社を辞める理由は人によってさまざまなものがありますが、自分の意志で退職するケースと雇用側の都合によって解雇されるケースの2つに大きく分けることができます。それが、「会社都合」と「自己都合」と呼ばれる退職名目です。
会社都合退職とは
会社都合の退職は、雇用側である会社が一方的に労働契約を解除することを言います。つまり、労働者は自分の意志とは反して退職を余儀なくされるのです。
経営難によるリストラや倒産、給与カットや早期退職制度への応募などが会社都合の退職として扱われます。
また、セクハラやパワハラの被害を受けたことによる退職の場合でも会社都合の退職になります。
※会社がセクハラやパワハラを認めるかどうかはまた別問題です。詳しくはこちらの記事もご覧ください。
自己都合退職とは
自己都合退職は会社都合退職とは反対で、労働者側が自分の意志や都合によって退職を申し出る場合のことを指します。
違う仕事に転職したいという場合や結婚、出産、引っ越し、家庭の事情などが理由に挙げられます。
また、会社で問題を起こしてしまって懲戒解雇されるような場合も自己都合退職の扱いになります。
会社都合と自己都合の違い
会社都合と自己都合の退職では、退職の際に受け取ることができる給付金の金額や扱い方が異なります。特にお金に関する問題は労働者にとって大きな違いになるでしょう。
退職金の金額
退職金規定は企業によって異なりますが、基本的に退職金の金額は会社の規模や勤続年数、退職理由が加味されて定められます。
つまり、退職理由が自己都合か会社都合の違いで金額差が出ることが多いのです。
ほとんどの場合、会社都合退職よりも自己都合退職のほうが退職金が少なくなります。
失業手当を受け取るための資格
退職をした後、雇用保険による失業手当を受けることができます。この失業手当を受けるための資格も会社都合と自己都合では内容が異なります。
会社都合の場合は「特定受給資格者」とされるので、離職前の1年間で6ヶ月以上雇用保険の被保険者期間があれば失業手当を受けることができます。
しかし、自己都合の場合は、離職前2年間で通算12カ月以上は雇用保険の被保険者でなくてはなりません。通算12ヶ月以上とは、原則として「11日以上働いた日がある月」を1ヶ月と数え、それが過去24ヶ月のうち12ヶ月以上あることを言います。
つまり自己都合のほうが、失業手当を受けるための条件は厳しいと言えます。
失業保険の待期期間
失業保険の受給資格だけではなく、待期期間にも違いがあります。
待期期間とは本当に失業しているのかハローワークが見極めるための期間であり、その期間中はアルバイトであっても労働することが認められません。もし労働が発覚すれば、失業保険の受給資格が取り消されてしまいます。
この待期期間は7日間となり、その後給付制限を経て支給されることになります。
会社都合の退職であれば支給が優遇されるようになるので、待期期間7日間に加えて「1ヶ月の給付制限期間」が経過すれば、失業手当が支給されるようになります。
しかし、自己都合の場合は3ヵ月という給付制限が設けられるので、自己都合の場合は3ヵ月+7日間は失業手当が給付されないのです。
転職活動での心証にも影響する?
退職理由は金銭的な問題の違いがあるだけではなく、次の転職活動においても影響を与える可能性はゼロではありません。
自己都合の場合には、「自分の本当にやりたいことをしたい」「新しいスキルを身につけたい」など退職理由が前向きであれば、転職活動の際にも良い印象を与えることができるでしょう。
しかし、会社都合で退職したとなると、原因が会社にあるにもかかわらず「本人の成績不振や素行不良があったのではないか」といったネガティブな心証を持たれる可能性もゼロではありません。
もちろん会社都合だからこそ自分の意志ではないので退職は仕方がないという考えの面接官もいますが、自己都合退職よりも面接における退職理由の説明について、慎重な準備をしておきましょう。
会社都合と自己都合、どちらの退職理由がいいのか?
会社都合と自己都合の退職理由の違いを見てきましたが、どちらの方がメリットが多いのかと考えると、やはり会社都合の退職と言えます。
会社都合を自己都合と比較すると、
- 失業手当の受給要件が緩い
- 失業手当の受給開始が早い
- 会社都合のほうが退職金の金額が高いケースが多い
さらに受給日数は、
- 自己都合の場合、90日〜最長150日
- 会社都合の場合、90日〜最長330日
と、会社都合退職がいかに「失業者のための救済措置」になっているか、お分かりいただけると思います。
自己都合で退職したのに会社都合退職にできる?
会社都合退職の方が自己都合退職よりも失業手当などに関するメリットが多いので、退職するのであれば会社都合退職の方が望ましいと考える人が多いでしょう。
しかし、自分の意思で退職をする場合には会社都合退職にはなりません。
ただし、会社都合ではなく自己都合で退職してしている場合でも、会社都合退職に変更できるという例外ケースもあるのです。
会社都合退職に変更できるケースとは
本来であれば会社都合退職であるにも関わらず自己都合退職になってしまった場合や、自己都合であってもやむを得ない事情があったような場合にはハローワークで会社都合として認められるようなケースがあります。
- 会社や事務所移転で通勤が困難になった
- 入社時の契約内容と給与や待遇、仕事内容が異なった
- 給与支払いの遅延や滞納
- 残業時間が45時間以上が3ヵ月以上続いた
- セクハラやパワハラ、いじめ、嫌がらせの被害を受けた
- 会社が法令違反を犯した
こういったケースでは、たとえ自己都合であっても会社都合退職として扱われる可能性があります。
退職理由の変更は公的機関で相談を
自己都合で退職したけれど、もしかすると会社都合退職扱いになるのではないか?という場合には、公的機関で相談してみましょう。
ハローワークや労働相談窓口・法テラス・ユニオンなど公的などで相談や確認をすることができます。
もし会社都合退職に変更できるようなケースならば、泣き寝入りする必要はないのです。
退職理由は本当に正しいのか見当してみよう
自己都合と会社都合の退職理由は、ただ理由が違うだけではなく給付される失業手当や退職金などが関わってきます。
そのため、きちんと自分の退職理由が正当であるのかを知ることが大切です。
自己都合退職であったとしても、もしかすると会社都合退職として認められるようなケースもあります。
退職理由について不満や疑問がある場合には、是非当会にお問い合わせください。