「再就職に役立った資格・役に立たない資格30選」記事ではさまざまな資格を取り上げましたが、福祉系1つ取り上げてみても非常にたくさんの資格があります。
いったい、どの資格を優先して取るべきで、どれが取る必要がない、と言えるのでしょうか?
※役立つ福祉資格・役立たない福祉資格のアンケートまとめは記事後半にあります。すぐに読みたい方はこちらをタップしてください
STONECOLD>はい、わたしでよければ
福祉系の仕事を20年間勤めていらっしゃるSTONECOLDさんに「役に立つ福祉の資格、役に立たない福祉の資格」をおたずねしました。
※いち福祉業務従事者の意見としてご覧ください。本記事は資格の優劣を断じるものではございません
20年のキャリアを持つSTONECOLDさん
まずはかんたんにキャリアを教えて頂けますか?
STONECOLD>20歳で福祉専門学校を卒業して介護福祉士を取得。老人保健施設に介護職員として入職しました。 25歳でケアマネージャの資格を習得し「施設ケアマネージャー兼任介護職員」となりました。
30歳で社会福祉士、福祉住環境コーディネーターを取得し、居宅ケアマネージャーで2年ほど働いたのち「施設ケアマネージャー兼任介護職員」に戻り現在に至ります。
ほんとうに福祉一本でいらっしゃいますね。どうして福祉の道に進もうと思われたのでしょうか?
STONECOLD>日本が高齢化社会になることは1990年代当時からわかっており、介護を必要とされる方は増える一方のため、これから確実に需要の増える分野だと思ったからです。
介護保険がスタートした2000年当初は、社会的にも「これからは介護の時代だ」という雰囲気があり、当時は将来有望な職業として考えられていたと思います。
福祉介護業界の厳しい現実
当時は……というと少し含みがあるように思いますが、福祉業界は以前より有望ではなくなったということでしょうか?
STONECOLD>現在、介護の仕事はまったく人気が無いというのが正直なところです。介護資格を取得するための専門学校の定員も埋まらず、学校も閉鎖が相次いでいます。わたしの母校も、今年は定員80人に対して入学者は20人しかいなかったそうです。
STONECOLD>有望さが減った理由は、想像以上に介護を希望する老人が増えたため福祉に回すお金が足りなくなり、介護報酬が減らされているため職員の給料が上がらなくなったからです。また認知症の老人が多くなったことで仕事の手間が増えて激務になってきたということもあります。
現場を20年間見て、介護業界から20年間お給料を貰っていたSTONECOLDさんだからこそ言えるリアルです。この状況だからこそなのか、国は外国人労働者を受け入れようとしてるんですね。
介護には大別して2つ
また基本的なところをお聞きしたいんですが、福祉業界って「施設介護」とか「訪問介護」とか、大きな区別があるんですか?
STONECOLD>福祉の世界は大別すると「施設サービス」と「在宅サービス」にわかれます。施設に分類されるのが「老人保健施設、特別養護老人ホーム」などで在宅サービスに分類されるのが「訪問介護、訪問看護、訪問入浴、訪問リハビリ、通所介護、通所リハビリ」などになります。
なるほど。STONECOLDさんは2つのうち「施設サービス」に従事していたほうが長いのですか?
STONECOLD>わたし自身、「施設サービス」に約18年、「在宅サービス」として居宅ケアマネージャーをしていた期間が2年間あります。
※居宅ケアマネージャー・・・在宅サービスの利用計画を立てる仕事。自宅で受けられる介護サービスの紹介、ケアプランの作成や調整、費用の計算や請求などを利用者に代わり行うもの
専門校に行くか、働きながら学ぶか
それにしても数多くの福祉資格をお持ちですよね。これらはすべて働きながら勉強されてるんですか?
STONECOLD>介護福祉士は専門学校を卒業して取得しました。それ以外の資格は業務後に勉強して取得しています。社会福祉士の取得時は、業務後や休みの日にスクールにも通いました。
介護の現場は忙しいイメージがありますから、業務後の勉強となると大変だったんじゃないですか?
STONECOLD>実際の介護の現場はイメージほど大変じゃないです。例えば夜勤は17時間勤務ですが、夜は利用者様も寝ているので勉強の時間にあてたりも出来ました。基本的に残業は無いし時間がくれば終わる仕事なのでスクールにも通えました。
それは実際に勤務してみないとわからないことですね
試験の難易度
それぞれ思いつく資格で結構なんですが、試験の難易度としてはどうでしたか?
STONECOLD>まず圧倒的に社会福祉士の難易度が高く、1年くらい勉強しました。続いてケアマネージャーと福祉住環境は半年くらい勉強しました。いっぽう、介護福祉士は簡単です。1ヵ月も勉強すればほとんどの人が受かります。
社会福祉士の勉強期間1年は納得としても、ケアマネと福祉住環境も半年ほども必要なのですね。ケアマネって一般的に人気がありそうに思うのですが、経験者であるSTONECOLDさんはアンケートで「ケアマネは取らないほうがいい」と答えていましたよね
STONECOLD>取らないほうがいいです。ケアマネって実に損な役回りでして、責任は重いが給料は安いと言う……じっさいに私が居宅のケアマネをやっていた期間は介護をやっていた時期よりも年収が50万近く下がりました。
なぜかというとケアマネになると夜勤が無くなるので、夜勤手当がないぶん必ず収入が下がるんです。介護だけがもらえる”処遇改善交付金”というお金も年に40万近くあるのですが、これもそっくり無くなります。
STONECOLD>苦労してケアマネをとって給料が50万も下がるんじゃとてもおすすめはできません。さらにケアマネって実は国家資格じゃないので将来的にはどうなるかわからないような資格なんです。受験者も年々減少しています。ケアマネ不要論などという話もすでに出てきているくらいです。
そんな実情だったのですね。驚きです。ケアマネになるには実務経験5年も必要なのに、その処遇はあんまりですね。
おすすめのお仕事ルート
STONECOLDさんが業界未経験の方に特におすすめできる、福祉介護系のルートってなにかございますか?
STONECOLD>いちばんのおすすめは専門学校~介護福祉士取得の最短ルートですね。2年でとれます。
STONECOLD>次は初任者研修~実務者研修~介護福祉士ルートですね。3年かかります。現場仕事が嫌じゃなければ他の資格は必要ないと思います。
STONECOLD>ある程度、経験を積んで自信がついてきたら派遣で介護をすることもおすすめしたいです。給料がいいし、余計な業務が各段に少なく気楽に働けます。介護福祉士があれば時給1600円、夜勤専門だと1夜勤3万円くらいが相場になっています。
なるほど、派遣だとするべき業務が限られて「あれもこれも」の注文がないんですね。給料も思ったより高い!
介護のプロが見た資格のオススメ、非オススメ
最後になりますが、皆さまのアンケートでいただいた役立つ・役立たない資格の中で特に「オススメ、非オススメ」があれば教えてください
STONECOLD>オススメは断然介護福祉士、非オススメはケアマネージャーですね。
やはり、ケアマネ非推奨はブレないのですね。今日はどうもありがとうございました!
この福祉資格は役に立った、という声13選
社会福祉主事任用資格。 大学でとった資格でしたが、(公務員試験を受けないのなら)就職にも転職にも役に立ちません。上位資格の社会福祉士を目指すのが良いと思います(STONECOLDさん)
義肢装具士。 義肢装具士は地味な資格ですが装具を必要とする方は意外と多く修理も必要なためニーズは高く転職には役に立ちました(STONECOLDさん)
福祉用具専門相談員。 難易度のわりに求人もあり転職に役に立ちました。(STONECOLDさん)
介護福祉士は求人がたくさんあって転職には困りませんでした。日本全国で働けます(STONECOLDさん)
看護師。日本中どこでも需要があり転職には非常に役に立ちました。日本中どこでも働けます
認知症介助士。 介護福祉士と合わせて取得すると転職に有利でした。グループホームなどで需要があり重宝されます(STONECOLDさん)
管理栄養士。 施設や病院など様々な場所でのニーズがあり転職に非常に役に立ちました
医療事務の資格は病院などへの転職時にニーズが非常に多く専門性もあるのでとても役に立つ資格でした。
介護職員初任者研修(ホームヘルパー)は介護の仕事をしたいなら必ず取っておいた方がいい資格です。取得難易度も低く求人も多くありました。(STONECOLDさん)
介護福祉士実務者研修は、福祉の世界で働きキャリアアップしていくには有効な資格です。この資格があると転職時に有利で給料が上がることも多いです(STONECOLDさん)
レクリエーション介護士の資格は介護福祉士等と合わせて取得していると転職時に有利になりました。面接時などに専門性をアピールできる資格です
「認定介護福祉士」は介護福祉士の上位資格であり取得者も少なく転職時には強い武器になりました。ニーズも多くこれから有望な資格です。
心臓リハビリテーション指導士 30代医療職ですが心臓リハビリテーション指導士を取得しました。高齢者の心不全患者が増えているため、循環器クリニックなどから採用されることが多くなったと感じます。まだまだ需要はあるので取得して良かったと思っています。
この資格は役に立たなかったという声11選
ケアマネージャー。 給料も安く資格更新にお金もかかるため役に立たないどころか損しました。とらないほうがいいです。(STONECOLDさん)
ケアマネージャー・・・介護支援専門員ともいう。5年ごとに研修・更新の必要がある。研修時間は54~88時間。更新料は40000~70000円程度(内容、地域による)。上位資格として主任ケアマネ(主任介護支援専門員)がある。
福祉住環境コーディネーター。 まったく需要がなくなんのための資格かわからず転職には役にたちませんでした(STONECOLDさん)
訪問介護員。 悪くない資格ですがどうせなら介護福祉士をとったほうが需要はあります。(STONECOLDさん)
理学療法士。 求人はありますが求められる能力が高く資格があっても採用されない可能性が高いです。割に合わない資格です(STONECOLDさん)
言語聴覚士。 あまり求人がなく狭き門です。需要自体が少ない資格です
作業療法士。 求人自体が少なくあまり転職先がありません。似ている資格だと理学療法士のほうが需要があると思います。
介護事務。 介護事務の資格はまったく役に立ちませんでした。なくても仕事ができるので意味のない資格でした(STONECOLDさん)
音楽療法士。求人が全くないため転職には役に立ちませんでした。趣味として取るには良いですがこの資格だけではなにもできません。
栄養士の資格だけではあまり役に立ちませんでした、上位資格の管理栄養士の資格を求められることが多いです。
精神保健福祉士の資格は求人もほとんどなく、資格がなくても働けるためほとんど役に立ちませんでした。専門性の低い資格です。
アロマテラピー検定1・2級。 転職には全く役に立ちませんでした。趣味としてとるには楽しい資格ですが残念ながら転職に結びつく資格ではありませんでした。(STONECOLDさん)
福祉の資格で免許が要るのは「訪問介護」だけ
福祉系の資格というものは、看護師などとは違い「その資格者しかしてはいけない介助」というものは存在しません。つまり、働きながら資格取得を目指すといったことが可能です。施設の多くでは、資格取得に補助金を出したり受験費用の負担をしているでしょう。
いっぽう、「訪問介護」だけは介護保険の規定で唯一無資格でできないものです。訪問介護をしながら資格取得を目指すといったことも出来ませんので注意が必要です。
おわりに
いかがでしたでしょうか。介護経験20年というプロの意見を聞き、それでも介護の道に進まれたいということであれば、さまざまなルートがあります。
有利不利な資格は数あれど、理由があって「介護をやってみたい、やりたい」という思いがあれば、それだけで介護系は門が開かれています。
厚生労働省でも、介護の職につきながら自分の将来の展望が見やすくなる「キャリアパスモデル」というものをいくつか公開しています
厚生労働省:キャリアパスモデル等の公表について
STONECOLDさんの言うように、『専門学校へ通うか』、『現場から入る(+派遣で入る)か』という選択肢もあります。この記事があなたの考えの助けになればさいわいです。
※本記事は介護業界を20年経験された社会福祉士の意見であり、資格の優劣を断じるものではございません