退職の申し出は、実は口頭でも法的には問題なく、当事者間に合意があれば効力を持ちます。
言ってしまえば、「退職届を出さなくても、法的には何の問題もない」のです。
ではなぜ退職届が必要になるのでしょうか。それは「言った・言わない」を防ぐためです。
何らかの理由で会社側が「退職するなんて聞いていない」と言い始めると、退職の手続きを進めてもらえなかったり、無断欠勤を理由に退職金の減額や懲戒免職の扱いにされたりと、退職後の生活に悪影響が出る可能性があります。
こうした事態を防ぎ、確実に退職するために、退職の意思を退職届という形に残す必要があるのです。
以下ではだれでもすぐに作成できて、かつ法的効力を持たせられる退職届の作り方と提出の手順について、わかりやすく解説していきます。
退職届に書き方・書くべき内容を理解しよう
上記は退職届の見本です。こちらに基づいて書き方・書くべき内容について解説します
【書き方について】
- 用紙:白色A4が一般的です
- 縦書き横書き:どちらでも構いません。本記事では横書きで解説します。
【内容について】
退職届に必要な項目は以下の8つです。
1.表題:退職届
2.届出年月日:提出する日付を記入します。
3.宛名:直属の上司ではなく、社長などの最高執行責任者の役職と名前を書きます。
4.所属部署・氏名・押印:自分が所属していた部署名と氏名を書きます。
印鑑はシャチハタでも構いませんが、認印や実印の方がスムーズです。なお、後述する電子内容証明を利用して送付刷る場合は印鑑は不要です。
5.書き出し:私儀(わたくしぎ)。「私個人に関して」という意味の言葉で、届け書きなどで自分の話をする時に使います。
6.退職理由:自己都合退職の場合は「一身上の都合」とします。具体的な内容を書く必要はありません。
7.退職日:はっきりと西暦(もしくは元号)と月日を書きます。
8.文末:「退職いたします」と言い切ってしまってOK。
以上に従って執筆下さい。
退職届フォーマットに従えば、執筆も簡単
さて、簡単に執筆方法を紹介しましたが、当会では退職届のフォーマットをご用意しております。
フォーマットを使用する際、変更する内容は上記の7と2〜4だけでOKです。
>>>>>>>>>>退職届のフォーマットダウンロードはこちら<<<<<<<<<<
また、当会のフォーマットは次に説明する「内容証明郵便」に対応したものになっているからです。内容証明郵便には、細かなルールがありますので、フォーマットをそのままお使いいただくことで、ミスを無くすことができます。
※当会のフォーマットはMicroSoft Word 2016で作成しており、WindowsのPCユーザーに合わせた仕様となっております。スマートフォンやMacでWordを閲覧した場合、文字のズレなどにより、内容証明便のルールを満たしていない場合があります。後者のユーザーは、既出の見本画像を基に手書きで内容証明便のルールを満たした退職届を作成して下さい。
<補足>
・内容証明郵便で発送できるように、会社名が20文字以上になる場合は改行して書くようにしてください。
・後述する電子内容証明では、印鑑は不要です。
・手書きで作成する場合は、改行箇所などもフォーマットと全て同じにしてください。
内容証明郵便で発送する
内容証明郵便で「送った・受け取っていない」を回避する
口頭での退職の申し出は「言った・言わない」の問題につながります。
一方で、退職代行サービスを利用する場合、たいてい退職届は郵送で提出しますが、この際も「送った・受け取っていない」の問題につながる可能性があります。
退職届に法的効力を持たせるためには、退職する側が「確実に退職届を提出した」と証明できるようにしておく必要があります。
そのために利用したいのが、郵便局の「内容証明郵便」サービスです。
内容証明郵便とは、「いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを、差出人が作成した謄本によって当社が証明する制度」(引用:郵便局)です(謄本とはコピーのことです)。
このサービスを利用すれば、「退職届を提出した」という事実を郵便局に証明してもらえるため、「送った・受け取っていない」の発生を未然に防ぐことができるのです。
内容証明郵便には2つの方法がある
内容証明郵便で発送する方法は大きく2つあり、一つは直接郵便局に持ち込んで郵送する「内容証明」、もう一つはインターネットを通じてワードファイルをアップロードするだけで、郵便局が印刷から発送までを自動で行ってくれる「電子内容証明」です。
下図は「直接郵便局に持ち込みたい、手書きで提出したい場合=内容証明」「オンラインで済ませたい、手書きでなくても良い場合=電子内容証明」の両方の手順について、まとめたものです。
それぞれにルールや特徴がありますが、ネットが得意な方は電子証明を、「なんだか面倒だな~」という方は郵送が良いのではないでしょうか。
内容証明便のルールについて
内容証明で送る書類については、内容証明(郵送)/電子内容証明時において、それぞれ執筆のルールがあります。
<内容証明の場合>
- 横書きの場合は「1行20字以内、1枚26行以内」か「1行13字以内、1枚40行以内」か「1行26字以内、1枚20行以内」
- 記号は1個1字換算。ただし、()は1セットで1字とし、上(横書きの場合は左)の()が属する行の字数として数える。 など
詳細はこちらをご覧ください。
<電子内容証明の場合>
- 文書作成ソフトはMicrosoft Word 2010, 2013, 2016, 2019。
- 文字ポイントサイズは10.5ポイント以上145ポイント以下。
- 余白は横書きの場合、上左右が1.5cm以上、上下右が1.5cm以上、下が7cm以上(全ページ)。
- 文字の種類はJIS第1、2水準範囲の文字(外字はサポートなし)。 など
詳細はこちらをご覧ください。
退職届フォーマットは、内容証明に関する条件を満たします
当会のフォーマットはこれらの条件を全て満たしております。設定などは変更せず、そのままご利用いただくことで、
どちらの内容証明をも見大した内容となります。(印刷したものに押印いただくことで郵送でも利用可能です。)
>>>>>>>>>>退職届のフォーマットダウンロードはこちら<<<<<<<<<<
※当会のフォーマットはMicroSoft Word 2016で作成しており、WindowsのPCユーザーに合わせた仕様となっております。スマートフォンやMacでWordを閲覧した場合、文字のズレなどにより、内容証明便のルールを満たしていない場合があります。後者のユーザーは、既出の見本画像を基に手書きで内容証明便のルールを満たした退職届を作成して下さい。
<補足>
・内容証明郵便で発送できるように、会社名が20文字以上になる場合は改行して書くようにしてください。
・後述する電子内容証明では、印鑑は不要です。
・手書きで作成する場合は、改行箇所などもフォーマットと全て同じにしてください。
内容証明(郵送)の発送方法
内容証明は全ての郵便局で対応しているわけではなく、集配郵便局および支社の指定した郵便局でのみ対応してもらえます。
そのため郵便局の窓口から発送する場合は、まず自分が退職届を持ち込もうとしている郵便局が内容証明を受け付けているかを問い合わせましょう。
そのうえで退職届とは別に封筒を用意します。封筒に記載するのは、以下の3項目です。
- 表に会社の住所と社名、直属の上司の所属と氏名を書く。
- 表の宛名の隣に「親展」と書く(受け取ってもらえない可能性を考慮し、「退職届在中」とは書かない)。
- 裏に自分の住所と所属、氏名を書く。
郵便局の窓口で中に入れる書類を見せる必要があるため、封はせず、退職届と一緒に持っていくようにします。
また「配達証明」は内容証明郵便にオプションとして加えられるサービスで(料金は320円)、郵便物を配達した事実を証明することができます。
より確実に「送った・受け取っていない」のトラブルを防ぐためにも、内容証明郵便と併せて活用しましょう。
「内容証明」と「電子内容証明」のメリット・デメリット
退職届の作り方も発送方法も理解できたけど、結局「内容証明」と「電子内容証明」のどちらで提出すればいいんだ?
そう思った人のために、下表にそれぞれのメリットとデメリットをまとめました。
内容証明 | 電子内容証明 | |
---|---|---|
メリット | ・手書きの退職届を提出できる。
・書類が2枚までの場合は、電子内容証明より料金が安くなる。 |
・自宅のPCで手続きを終えられる。 |
デメリット | ・郵便局の窓口に行く必要がある。
・全ての郵便局で対応しているわけではない(集配郵便局および支社の指定した郵便局のみ)。 ・退職届を3部用意したり、封筒を用意したりと、手間がかかる。 |
・手書きの退職届は提出できない。
・書類が2枚までの場合は、内容証明より料金が高くなる。 |
手書きの退職届を出したい人や、料金面が気になる人、ネットが苦手な方は内容証明、とにかく手間をかける余裕がないという人は電子内容証明で退職届を発送するのがおすすめです。
まとめ
「退職届を会社に提出した」という事実を証明できなければ、退職後の生活に悪影響が出る可能性があります。
そのためにも、内容証明郵便で退職届を提出する必要があるのです。
といっても、もう辞める会社のために余計な時間や労力をかける必要はありません。
ここで紹介したフォーマットを使い、手順を守って提出すれば、退職届に必要な内容を盛り込みつつ、内容証明郵便で発送できるようになっています。
自分で何か考えたり、手を加えたりする必要は一切なし。手早く作成・発送して、退職への歩みを進めましょう。
もし、退職代行サービスをご利用されている方でこの記事を見ていただいている方がいらっしゃれば、退職届の作成・郵送が終わった後にやることは、退職代行サービスを申し込んだ後にやるべき4つのことで解説しています。こちらも参考にしてください。