それぞれの違いは以下のとおりです。
・退職願
「退職させて頂けないか」と会社にお伺いを立てる文書。上司や会社に受理されれば退職が成立する。「労働契約の合意解約の申し入れ」という言い方もでき、合意(受理)しなければ効力は無いと言える。
・退職届
「退職します」と会社に届け出る文書。会社が受理されずとも提出さえすれば退職が成立する。
・辞表
会社”役員”がその役職を辞める際に出したり、”公務員”が退職する際に提出する文書。一般的な会社員が使うものではないが、使ったとしても特に問題はない。
実態にほとんど違いなし
退職願も退職届も辞表のどの様式であっても、通常は提出さえすれば「わたしは退職する」という意思を伝えられることに変わりありません。本来、口頭で伝えるだけでも構わないものですが、多くの会社では就業規則で「書面を提出すること」などと定められているため、書面で提出するのが通常です。
違いが明確になるのは裁判沙汰くらい
退職願と退職届の違いで問題があるとすれば、万が一退職に関してなにかの裁判や労働審判になった際「社員が出してきた書面は退職”願”だ。会社側は願いを聞き届けていないのだから退職は成立していない」と会社側が屁理屈をこねるといった場合です。こういったケースがあり得る職場でない限り、あまり深く考える必要もないと思われます。不安なら「退職届」という件名にして提出しましょう。
退職願・退職届・辞表がおなじ効力?
ただ「退職届」にしても、裁判になるとあまり意味がない可能性があります。なぜなら過去の判例では「退職届」や「辞表」と書かれた文書であっても「労働契約の合意解約の申し入れ(=退職願と同じ)」と裁判でみなされるケースがたいへん多いためです。
大隈鉄工所事件 昭和57年 (オ) 327
これを回避するには件名を「退職届」と書くだけではなく、内容もお伺いをたてる感じでなく「明確に辞める意思」を伝えます。
書面よりも、まずは相談ベース
いずれの書面を出すにしても、提出前にいちど上司に「ご相談があるのですが」と切り出し退職の意思を伝えるのが一般的です。そこで了解を得られた後に退職願(退職届)を出すとよいでしょう。
もしも「辞めるのは待ってくれ」と返事があった場合は対応が手間ですが、曖昧な態度をとらずに、明確な「辞めたい・辞める」という意思を示します。