労災認定の実態。精神障害は認定されづらい?

業務中や通勤中の怪我や病気の治療には労災が対象となりますが、労災は精神障害も対象になります。

近年、仕事によるストレスが関係した精神障害における労災請求は増加傾向にありますが、精神障害は認定される判断が難しいと言われています。

精神障害の場合はどのように労災認定されているのでしょうか?

精神障害における労災認定の基準や実態について詳しく解説していきます。

労災における精神障害の実態

精神障害の労災認定条件に悩むビジネスマン労災と言えば、業務中の事故による怪我や、通勤中の交通事故を思い浮かべる人も多いかもしれません。しかし、怪我や病気や死亡だけではなく、精神障害も労災の対象になります。

2011年12月に精神障害に係わる労災について認定基準が改められました。

2019年11月現在、精神障害の労災認定の実態はどのようになっているのでしょうか?

仕事における心理的負担の考え方の変化

現在は「セクハラ」「パワハラ」といった言葉が一般的に知られており、職場でセクハラやパワハラを受けたことで精神障害を患えば、職場に障害の起因があると考えられます。

また、「働き方改革」によって改善されつつあるものの、仕事量や労働時間が多すぎることが心理的負担となり精神障害を患ってしまった場合にも職場環境に問題があれば、労災に認められる要素があることになります。

時代と共にメンタルケアは、社会全体で取り組む問題へと変化しているのです。

労災認定における精神障害の実態

労災における精神障害の認定は、1999年に制定された「心理的負荷による精神障害等に係わる業務上外の判断指針」によって判断されていました。

しかし、精神障害における労災請求は、年々増加傾向にあります。

2000年には精神障害における労災請求は212件であったのに対して、2015年には1515件と大幅に増加しています。(参照:こころの耳

そして、同時に労災認定において迅速に判断が求められるようになってきたのです。

そこで、2011年12月に「心理的負荷による精神障害の認定基準」が定められ、より分かりやすい判断基準で迅速に認定判断できるようになったのです。

そうはいっても、精神障害に関しては目に見える病気ではないので、労働者自身が動かなければ労災が下りないようなケースも多いのが現状です。

実際に、請求件数は年々増加傾向にありますが、支給決定件数は横ばいとなっています。精神障害で労災が認められるケースは、厚生労働省発表の精神障害労災補償状況から見ても分かるように2017年でも32.8%の認定率であり、認定は極めて困難だと言わざるを得ません。

精神障害の労災認定基準とは

労災認定を受けるべき精神障害を患う男性仕事が原因でうつ病などの精神障害を患った場合、何らかの補償を受けたいと考えるのは当然でしょう。

しかし、労災保険の補償を受けるには、労災事故であることが認められなくてはいけません。つまり、精神障害の発症原因が業務と関係していることを認められればいいのです。

労災保険における精神障害の認定基準を紹介します。

精神障害における労災認定の要件

精神障害における労災認定の要件として、厚生労働省が定めているものは以下です。

  • 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
  • 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6ヶ月の間に業務による強い心理的負荷が認められていること
  • 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

(参照:精神障害の労災認定-厚生労働省

これらが労災認定における要件となりますが、更に詳しく分かりやすく見ていきましょう。

認定基準の対象となる精神障害とは

労災認定基準の対象となる精神障害であるかどうかは、国際疾病分類第10回修正版第Ⅴ章「精神および行動の障害」によって判断されるのです。

代表的な例として、統合失調症やうつ病などは労災認定の要件として認められます。

一方で、認知症や頭部外傷による精神障害や、アルコールや薬物による障害(=個体側要因)は、その人固有の体調不良となるので認められません。

業務による強い心理的負荷とは

精神障害における労災認定では、発症6ヶ月前間の状況確認があります。

その期間に心的負荷が強い業務上の出来事が起きているか確認し、「業務による心理的負荷評価表」によって評価されるのです。

心理的な負荷が業務にあることを証明できれば、労災認定の要件として認められやすくなります。

業務による心理的負荷評価表」には具体的な出来事の例として挙げられているので、自身で確認することも可能です。

業務以外の心理的負荷がないかどうか

精神障害は、個人的な事情による心理的な負荷が原因になるケースもあります。

家庭環境や仕事外での対人関係、金銭問題、事故や事件など、業務以外の原因の影響力が大きいと判断されてしまえば、労災としては認められないことになってしまいます。

そのため、「業務以外の心理的負荷評価表」によって業務以外の心理的負荷が客観的に見てどの程度であったか評価します。

精神障害における労災認定のポイント

精神障害における労災認定のポイントを教える男性精神障害は目に見えない病気であることや、本人からの申告がなければ周囲も気付いてあげられないようなケースもあります。

精神障害が労災認定されるために、気を付けたいことやポイントとして知っておきたいことを押さえておきましょう。

労災認定の鍵は「診断書」

労災認定を受けるためには、労災申請書を準備して労働基準監督署へ提出する必要があります。(労災申請の方法の記事とリンク)

その際に、業務上の起因により精神障害を患ったことを証明できる医師の診断書が必要です。

労災認定対象の精神障害であることが診断書で記載されており、なおかつ原因となる状況などもカルテに記録されていると良いでしょう。

パワハラやセクハラなどの場合には、メールやボイスレコーダーなど証拠を集めて提出することも有効です。

過労やうつ病による自殺も労災認定される

自ら命を絶つ自殺は故意の死亡にあたるので、以前までは労災で認められにくいものでした。

しかし、近年は過労やうつ病による自殺者が増加していることから労災認定する例が増えてきているのです。

過労自殺は、長時間労働による心理的負荷の強度が高ければ労災に認定されます。

またうつ病の場合は、正常な判断が出来ない状況での行為であると認められ、原因が業務上にあれば労災が認定されます。

まとめ

精神障害は、病気や怪我のように薬や手術ですぐに治せるものではありません。そのため、業務が起因となっているのであれば労災による補償を受けて、しっかりと療養する必要があります。

しかし、怪我や病気に比べると明確に症状が出にくく、症状や証拠などを基準に判断することは難しいものです。

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