退職をしたいけど退職後の生活が不安で一歩踏み出せない、と思っている方は少なくないのではないでしょうか。
実際に今の仕事を辞めてから次の仕事が決まるまでは、退職金で生計を立てている方が多いです。
退職を考えている方に質問ですが、もし今会社を辞めた場合に、退職金がいくらもらえるか把握していますか??
その不安は退職金について理解していないからかもしれません。
そこでこの記事では退職前に確認しておくべき退職金の知識と、退職金以外で退職後に生計を立てる方法を解説します。
退職金のことを把握して、退職後の不安を解消しましょう。
退職前に確認しておきたい、会社の退職金制度
退職する前にまずは、今あなたが勤めている企業の退職金制度を理解しましょう。
自社の制度でもらえるかどうか確認しよう
まずは自社の制度でもらえるか、確認をしましょう。
退職金制度は会社によって様々であり、もらうための条件が定められていたり、またそもそも退職金制度が無い会社もあります。
あなたが今の状況で退職金をもらえるかどうか、就業規則を見て確認してみて下さい。
就業規則が分かりにくい、もしくは退職金規定の記載が無い場合は、総務や人事の人に聞いてみましょう。
実際にいくらもらえるのか計算してみよう
退職金をもらうための条件を満たしている場合は、実際にいくらもらえるのか計算してみましょう。
退職金の計算式は会社によってそれぞれ異なりますが、勤続年数に比例して退職金額が増える企業が多いです。
具体的な退職金の計算方法は、就業規則にも書かれているはずなので、ご自身で計算してみましょう。
ここで算出できる金額は目安程度ですが、退職後の生計を考える上では欠かせないプロセスです。
退職金の支給日
もらえる退職金の目安金額を算出したら、次は支給日を確認しましょう。
退職金の支給日についても、就業規則に書かれているはずです。
もし就業規則に記載されていない、もしくは支給日になっても支払われない場合は、ご自身で請求する必要があります。
法律では退職者の請求から7日以内に退職金を支払わないといけないことになっています。
退職金には税金が掛かる
退職金額を算出できても、残念ながら丸々もらえるわけではありません。
あなたの給与から税金が引かれているように、退職金にも税金が掛かります。
そのため実際には退職金から所得税および住民税を差し引いた金額が振り込まれることになります。
所得税の計算方法
所得税の計算方法は、「課税退職所得額×所得税率-税額控除額}×102.1%」で算出できます。
そのため所得税を算出するために、課税退職所得額を把握する必要があります。
課税退職所得額を算出する
課税退職所得額は以下の計算式で算出します。
- 課税退職所得額=(退職金額-退職所得控除額)÷2
ちなみに課税退職所得額は住民税の算出にも用いられます。
退職所得控除額を算出する
退職所得控除額は会社の勤続年数によって変わり、20年を境に計算方法が変わります。
- 勤続年数20年以下:40万円×勤続年数
- 勤続年数20年以上:70万円×(勤続年数-20)+800万円
上記の計算式に当てはめると、勤続年数3年であれば退職所得控除額は120万円、25年であれば1,150万円となります。
この数字が大きいほど、所得税が掛からなくなります。
つまり勤続年数に比例して退職金額が上がる企業の場合、勤続年数を積み重ねるほど税金が少なくなると言ってもいいでしょう。
所得税を実際に計算してみる
退職所得控除額を計算すれば、所得税を計算することが出来ます。
所得税を求めるのに必要な「所得税率」と「税額控除額」は既に数値が決められているので、それを基に算出します。
課税退職所額 | 税率 | 税額控除額 |
195万円未満 | 5% | 0円 |
330万円未満 | 10% | 97,500円 |
695万円未満 | 20% | 427,500円 |
900万円未満 | 23% | 636,000円 |
1,800万円未満 | 33% | 1,536,000円 |
住民税を計算する時も、上記で求めた課税退職所得額を用いて算出します。 計算式は以下の通りです。
- 住民税=課税退職所得額×10%
所得税では課税退職所得額に比例して税率が上がりますが、住民税は一律10%となります。
退職金で確定申告が必要な場合
退職をして退職金をもらえば終わり、と思っていると、もしかしたら損してしまう可能性があります。
損をしないためにも、退職前に「退職所得の受給に関する申告書」を会社へ提出しましょう。
「退職所得の受給に関する申告書」とは、退職金にかかる税金を正確に計算するために必要な書類です。
「退職所得の受給に関する申告書」提出の流れ
「退職所得の受給に関する申告書」は会社からもらえる場合もあれば、自分で国税庁HPからダウンロードして用意しないといけない場合もあります。
申告書提出の流れは以下の通りです。
- 「退職所得の受給に関する申告書」を会社からもらうor自分で用意して記入する
- 退職前に会社へ提出
- 退職金の支払いが行われるときに適正な税額が源泉徴収される
忘れずに提出すれば、適正な金額が源泉徴収されます。
退職所得の受給に関する申告書の提出を忘れた場合
「退職所得の受給に関する申告書」の提出を忘れてしまった場合、退職金額の20.42%(所得税20%、復興特別所得税0.42%)が源泉徴収として差し引かれます。
この割合は、課税退職所得額が695万円未満の場合は多めに差し引かれてしまうことになり、提出した場合よりも損していることになるのです。
そのため毎年2月~3月半ばにかけて行われる確定申告をして払い過ぎた税金を取り戻す必要があります。
しかし確定申告をわざわざ税務署へ提出するのは、非常に手間が掛かります。
そのため退職前に忘れずに「退職所得の受給に関する申告書」を提出しましょう。
退職金以外で取るべきお金の対策
以上ここまで退職金について解説をしました。
しかし中には「もらえる退職金が安い」とか「そもそも退職金をもらえない」という人もいると思います。
仮に十分な退職金をもらえたとしても、自分の貯金を切り崩すだけの生活は、かなりのストレスになります。
そういったストレスを少しでも和らげるために、以下の対策も退職前のうちから取りましょう。
生活コストを下げて支出を抑える
まずは生活コストを下げて支出を抑えます。
具体的には毎月支払っている固定費を見直すことです。
生命保険の解約、格安SIMへ変更、家賃の安い物件へ引越し、等々があります。
あなたにとって無理のない範囲で生活コストを下げれば、貯金が目減りしていくストレスを和らげることが出来ます。
失業保険の受給申請をする
失業保険の受給申請も忘れずに行いましょう。
雇用保険に加入していた期間が直近2年以内で12ヶ月以上ある人は受給資格があります。
こちらのリンクに、受給までの流れなどをまとめています。
アルバイトをするなら就業手当を活用しよう
次の就職までにアルバイトなどで食いつなぐのであれば、就業手当の申請も検討してみましょう。
以下の条件を満たす人は就業手当の対象となります。
- 雇用期間が1年未満である(1年以上なら対象外)
- 退職日からアルバイト初出勤日の間が最低7日以上空いている(自己都合退職の場合は更に3ヶ月以上空ける必要あり)
- アルバイト先が決まった時点で失業保険の所定給付日数が1/3以上かつ45日以上残っている
人によっては退職日から最大で3ヶ月と1週間も待機しないといけませんが、しばらくはアルバイトで過ごそうと考えている方は検討しておきたい手当です。
まとめ
この記事のまとめに入ります。
退職をしようと考えている人は、退職前に退職金がいくらもらえるのか、把握しておきましょう。
【この記事のポイント】
- 退職金がいくらもらえるかは企業によって異なるので、退職前に自分で計算してみよう
- 退職金の支給日がいつなのか把握しておけば、退職後の計画を立てやすい
- 退職金にも税金が掛かるので、所得税・住民税とも試算しておこう
退職金がいくら手元に入るかで、退職後の生活が変わってきます。
働かずに休みたい、腰を据えて転職活動をしたい、勉強に費やしたい、など退職には様々な理由があると思います。
退職後の計画を立てるためにも、忘れずに自分がもらえる退職金額を把握しておきましょう。