退職給付金とは、会社を辞めたあとの生活を支えるために、国の制度(健康保険・雇用保険など)から受け取れる公的給付の総称です。代表的なものに、①傷病手当金(健康保険)②基本手当=いわゆる失業給付(雇用保険)③再就職手当(雇用保険)④教育訓練給付金 などがあります。条件を満たせばまとまった金額を受け取れる場合もありますが、受け取れる種類・金額・期間は離職理由・年齢・加入期間・体調などによって大きく変わります。この記事では、それぞれの給付の中身・金額の目安・受給条件・申請方法を、公的機関の情報にもとづいてわかりやすく整理します。
※本記事は一般的な制度の解説です。金額の上限額などは毎年改定され、実際に受け取れるかは個別の状況で判断されます。記載は2026年7月時点の内容で、最新・個別の可否は健康保険(協会けんぽ等)・ハローワーク・年金事務所の窓口でご確認ください。
退職給付金の主な種類(早わかり一覧)
「退職給付金」という単一の制度があるわけではなく、目的の異なる複数の公的給付をまとめて呼んだものです。まずは全体像を一覧で確認しましょう。
| 給付の名称 | 制度(窓口) | どんなとき | 金額・期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 傷病手当金 | 健康保険(協会けんぽ・健保組合) | 病気・けがで働けず休むとき | 給与の約2/3 / 通算1年6か月まで |
| 基本手当(失業給付) | 雇用保険(ハローワーク) | 働く意思・能力があり求職中のとき | 賃金日額の約50〜80% / 90〜330日 |
| 再就職手当 | 雇用保険(ハローワーク) | 失業給付を残して早期に再就職したとき | 残日数×60〜70%を一時金で |
| 教育訓練給付金 | 雇用保険(ハローワーク) | 指定講座で学び直しをするとき | 受講費の20〜最大80% |
| 高年齢求職者給付金 | 雇用保険(ハローワーク) | 65歳以上で離職したとき | 基本手当日額の30日 or 50日分(一時金) |
このうち、退職後の生活資金として金額が大きくなりやすいのが①傷病手当金と②基本手当(失業給付)です。以下で1つずつ見ていきます。
①傷病手当金(健康保険)

傷病手当金は、業務外の病気やけがの療養のために働けず、給与を受けられないときに健康保険から支給される所得補償です。うつ病などの精神疾患も、医師が「労務不能」と判断すれば対象になり得ます。
- 金額(1日あたり):支給開始日以前の継続した12か月間の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30 × 2/3(=おおむね給与の3分の2)。
- 支給される期間:支給を開始した日から通算して1年6か月まで。2022年(令和4年)1月の改正で「通算」方式になり、途中で復職した期間は差し引いて計算されます。
- 主な受給条件:(1) 業務外の病気・けがの療養であること、(2) 働けない状態(労務不能)であること、(3) 連続する3日間の待期を経た4日目以降の休業であること、(4) その間、給与の支払いがない(あっても手当金より少ない)こと。
退職後も受け取れる?(継続給付)
次の条件を満たせば、退職後も引き続き傷病手当金を受け取れます(資格喪失後の継続給付)。
- 退職日の前日までに、健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること。
- 退職日の時点で、傷病手当金を受けているか、受けられる状態(待期完成・労務不能)にあること。
注意:退職日に出勤してしまうと「退職日に労務不能で受けられる状態」に該当せず、継続給付を受けられなくなることがあります。退職前後の手続きは慎重に進めましょう。
②基本手当(失業給付/雇用保険)

いわゆる「失業保険」です。働く意思と能力があり、求職活動をしているのに就職できない「失業の状態」にある人に、ハローワークから支給されます。
- 金額(1日あたり=基本手当日額):賃金日額(離職前6か月の賃金総額÷180)の約50〜80%(賃金が低い人ほど率が高い)。年齢ごとに上限額があり、毎年8月に改定されます。
- もらえる日数(所定給付日数):自己都合など一般の離職者は90〜150日、倒産・解雇・雇止めなど(特定受給資格者・特定理由離職者)は年齢と加入期間に応じて90〜330日。会社都合のほうが手厚くなります。
- 受給できる期間:原則、離職日の翌日から1年間。この間に受け取り切れないと残りは受け取れません。
自己都合退職の「給付制限」は原則1か月に短縮
正当な理由のない自己都合退職では、待期7日のあとに一定期間、基本手当が支給されない「給付制限」があります。この期間は、2025年(令和7年)4月1日以降の離職について原則1か月に短縮されました(従来は原則2か月)。ただし、離職日前5年間に自己都合離職が3回以上ある場合は3か月です。また、離職の前後に指定の教育訓練を受けると給付制限が解除される仕組みもあります。倒産・解雇などの会社都合では給付制限はありません。
すぐ働けないときは「受給期間の延長」を
病気・けが・妊娠・出産・育児などで引き続き30日以上働けないときは、その日数分だけ受給できる期間を延長でき、延長は最長3年(本来の1年と合わせて最長4年)まで可能です。この延長を申請しておくことで、体調が回復してから失業給付を受け取れるようになります(後述の「積み上げ」の鍵になります)。
③再就職手当・④教育訓練給付金・⑤高年齢求職者給付金
- 再就職手当:基本手当の支給日数を所定給付日数の3分の1以上残して早期に安定した職に就いた場合の一時金。給付率は残日数が3分の2以上なら70%、3分の1以上なら60%(=残日数×給付率×基本手当日額)。
- 教育訓練給付金:指定講座の受講費用の一部を補助。一般教育訓練は20%(上限10万円)、特定一般は40%(上限20万円)、専門実践教育訓練は受講中50%+就職等で最大70%(さらに賃金上昇の要件を満たすと最大80%)。在職中でも利用できます。
- 高年齢求職者給付金:65歳以上で離職した人への一時金。被保険者期間1年以上で基本手当日額の50日分、1年未満で30日分。
結局いくら受け取れる?「最大28〜30か月」の正しい理解

ネット上では「傷病手当金と失業給付で最大28〜30か月分もらえる」といった説明を見かけます。これは誤りではありませんが、誰でも自動的に受け取れる金額ではなく、条件を満たした場合の”上限的な目安”です。仕組みを正しく理解しておきましょう。
- 傷病手当金と失業給付は同時には受け取れません。傷病手当金は「働けないこと」、失業給付は「働ける・求職中であること」が条件で、両立しないためです。
- そこで、まず働けない間は傷病手当金を受給(最長 通算1年6か月)し、その間に失業給付の「受給期間延長」を申請しておきます。
- 回復して働けるようになったら、延長しておいた失業給付を受給します。この”順番”で受け取ることで、期間が積み上がります。
合計が28〜30か月規模になるのは、傷病手当金の最長18か月に、失業給付の日数が長くなるケース(会社都合や45歳以上などで所定給付日数が多い場合)が重なったときの目安です。自己都合・加入期間が短いなどの場合は合計期間はもっと短くなります。実際にいくら・どれだけの期間受け取れるかは個別判断になります。おおよその金額を知りたい方は、無料の給付額診断で目安を確認できます。
「必ずもらえる」とうたう申請サポートにご注意

退職給付金をめぐっては、「誰でも最大○か月分・数百万円が必ずもらえる」といった表現で申請サポートを勧誘し、高額な手数料をめぐるトラブルになる例が報告されています。国民生活センターも2025年12月、こうした申請サポートに関する相談が近年急増している(2021年度の42件から2024年度は217件と、数年で約5倍)として注意を呼びかけています。
報告されている主な相談には、次のようなものがあります。
- サポートを利用すれば受給額が増えると期待したのに、実際には増えず、手数料だけを失った
- 途中で解約を申し出たら認められず、違約金を請求された
- 体調に問題がないのに医療機関の受診を勧められるなど、不正受給につながりかねない誘導をされた
依頼・契約の前に、次のような点は「注意のサイン」として確認しましょう。
- 「誰でも」「必ず」「最大○か月」と、受給を断定・保証するような表現をしている
- 手数料の金額・条件や、解約時の扱いが不透明
- 事実と異なる申告や受診をすすめてくる(不正受給は給付金の返還や罰則の対象になります)
なお、報酬を得て雇用保険・社会保険の申請書類の作成や提出そのものを代行できるのは、社会保険労務士法により社会保険労務士(社労士)に限られています。無資格の事業者が「申請を代行します」とうたう場合は特に注意が必要です。給付金は受け取れる種類・金額・期間が一人ひとりの状況で異なりますので、「必ず最大額がもらえる」という案内をうのみにせず、条件を正直に説明してくれるか、手数料や解約条件が明確かを確認しましょう。判断に迷うときは、ハローワークや健康保険の窓口、お住まいの消費生活センター(消費者ホットライン188)にも相談できます。
申請の流れと準備のポイント
- 傷病手当金:加入している健康保険(協会けんぽ・健保組合)へ「傷病手当金支給申請書」を提出。医師の意見と、在職中の期間分は事業主の証明が必要です。
- 失業給付・再就職手当・教育訓練給付:住所地を管轄するハローワークで手続き。失業給付は離職票を持って求職申込みを行い、待期・(自己都合なら)給付制限のあと、認定日ごとに支給されます。
- 準備は早めに:傷病手当金の待期や退職日の扱い、失業給付の受給期間延長など、手順やタイミングを誤ると受け取れなくなる給付があります。退職の1か月前など、余裕をもって準備を始めるのが安全です。
退職後の負担軽減もあわせて確認
- 国民年金の保険料免除(失業特例):退職(失業)した人は、前年所得をゼロとみなして審査する特例免除を申請できます(世帯の状況により全額〜一部免除・猶予)。
- 国民健康保険料の軽減:倒産・解雇・雇止めなど会社都合・非自発的な失業(特定受給資格者・特定理由離職者)の場合、前年の給与所得を大きく減らして計算する軽減があります。自己都合退職は対象外です。
自分で申請する?専門サポートを使う?
退職給付金は、要件や申請書類が制度ごとに分かれており、特に傷病手当金の退職後継続給付や失業給付の受給期間延長はタイミングの管理がむずかしいのが実情です。書類の準備や手順に不安がある場合は、ハローワーク・健康保険の窓口に相談するほか、給付金申請のサポートサービスを利用する方法もあります。全国退職者支援会の給付金申請サポートは、弁護士・社労士の監修のもと、受け取れる可能性のある給付の確認から申請手順のご案内までをサポートします(申請そのものはご本人が進めていただく形です)。無理に受給を保証したり、事実と異なる申告を勧めることはありません。
よくある質問
Q. 退職給付金は誰でももらえますか?
いいえ。給付ごとに加入していた保険・加入期間・離職理由・体調などの条件があります。たとえば傷病手当金は「働けない状態」であること、失業給付は逆に「働ける・求職中」であることが前提です。
Q. 傷病手当金と失業給付は同時にもらえますか?
同時には受け取れません。条件が相反するためです。先に傷病手当金を受け取り、失業給付は受給期間の延長をしておいて回復後に受け取る、という順番になります。
Q. 自己都合で辞めても失業給付はもらえますか?
受給できます。ただし待期7日のあとに原則1か月(2025年4月以降の離職の場合)の給付制限があり、所定給付日数も会社都合より短くなる傾向があります。
Q. 自分がいくら受け取れるか知りたいです。
受け取れる給付の種類や金額は状況によって変わります。おおよその目安は無料の給付額診断で確認できます。
まとめ
- 「退職給付金」は、傷病手当金・失業給付・再就職手当・教育訓練給付などの公的給付の総称。
- 金額が大きくなりやすいのは傷病手当金(給与の約2/3・通算1年6か月)と失業給付(賃金日額の約50〜80%・90〜330日)。
- 「最大28〜30か月」は同時受給ではなく、傷病手当金→受給期間を延長した失業給付、という順番で積み上げた場合の上限的な目安。条件しだいで大きく変わります。
- 手順やタイミングを誤ると受け取れない給付があるため、早めの準備が大切です。
あなたが受け取れる可能性のある給付を知ることが第一歩です。まずは無料の給付額診断で目安を確認し、申請に不安があれば給付金申請サポートもご検討ください。関連記事として特定受給資格者・特定理由離職者とは、障害年金とはもあわせてご覧ください。


